『秒速5センチメートル』を観た


映画はなるべく前情報を入れずに、できることならタイトルと監督しか知らないぐらいの無垢の状態で観たい。そのタイトルをどこからどのくらいの頻度で耳にするか、というようなことから勘を働かせて、なんかよさそうな気がしたら映画館やレンタルショップに足を運ぶやり方が好き。
テレビアニメなんかだと下調べすることに抵抗はないので、観る前に感想なんかを見てしまうのが好きじゃないのかもしれない。


そういう意味では『秒速5センチメートル』は僕にとってかなり手垢のついた状態だった。どうやら鬱アニメらしいとか、どんな結末だとか、最初のあの有名な台詞だとかをなんとなく知っていた。
新海誠監督の作品は『ほしのこえ』だけ観て、他の作品を観る気にはあまりならなかったのだけど、今年また新作をやるらしいとか一昨年やったやつがすごくよかったとか噂は聞いていたところに、ちょうど近場で上映の話があってタイミングが揃った気がしてきたので観た。


前置きが長くなったけど、ここから感想。少し箇条書き気味かも。
映像は美しいのに演出は素人くさいところがなんだかもったいない感じがした。気の利いた演出や表情のつけ方で説明すればいいものをとにかく語りで補うやり方が気になった。ただこれは一人称語りの限界を知ることができて勉強にもなった。
まったくもって救いがないのに、その救いのなさに説得力や共感の余地が見出せないのも気になった。あるべきピースの抜けた穴の周りを語りと映像と音楽がひたすらぐるぐるとまわっているような。この回転になにかしらの指向性があればぐっと印象は違ったかもしれない。


気になるところばかり挙げてしまったけど、観てよかったです。
映像も音楽も間違いないし、なにかミュージック・ビデオのような感じで物語を求めずに観るとすごくいいと思う。