大学生3

前回前々回の続き。




最後のひとつは旅行サークルという名のオールラウンドサークルみたいなところだった。50人ぐらいの規模だったと思う。明るい大学生が集まっていたけど、レジャーや飲み会に金を使うつもりもあまりなかったので、結局二年目でフェードアウトしてしまった。
僕にとってそんなに重要な場所ではなかったように思っていたし在籍期間は短かったけど、改めて振り返ってみるとなかなか悪くない経験だったと思う。今ではFacebookであるかなしかの繋がりがある程度だけど、近況を見ているだけで僕とまったく違う人種なんだとわかっておもしろい。「文化が違〜〜〜〜〜〜〜う」ってやつだ。
いわゆるテニサーとか飲みサーほどのチャラさはなくて、旅行の計画を立てたりする週一ミーティングのあとにアフターとしてちょっと月島にもんじゃを食べに行くような、「まったり系」というやつだ(この「まったり」という言葉ひとつとっても文化が違う感じがするよね)。
彼らを馬鹿にするつもりも卑屈になるつもりは今も当時もまったくなくて、ただ自分とは違うなと感じているだけだった。その違いがときに楽しく、ときに居心地が悪かった。たぶんよくある話だ。


そもそもどうして僕がこんな文化が違うサークルに入ったかというところから話そう。
入学式のすぐあとにある新歓期という第二の文化祭のような日にうろついていたら、そのときにリリー・フランキー風の変わった先輩に声をかけられたのがきっかけだった。旅行サークルのくせに「君、音楽に興味あったりしない?」と可愛い女の子二人を連れて声をかけてきたのだから、本当にめちゃくちゃな反則だ。
当時僕はDTMがやりたかったのだけど、鮮やかな赤い髪にピアスといういかにもな格好をしていたせいで、バンドサークルにこれでもかと声をかけられ続けてうんざりしていた。そこに「バンド」ではなく「音楽」という言葉で声をかけられて思わず立ち止まってしまった。
その先輩のキャラも強烈だったけど、連れていた後輩(僕にとっては先輩)の女の子二人も強烈だった。スタイルのいい美人なのに終始よくわからないリズムの中川翔子のような人と、バンギャファッションで猫のような目と唇がめちゃくちゃ可愛いのに建築科在籍でポストロックやフリージャズが好きで残響系バンドをやっているという反則のような属性持ちの二人だった。
案外流されやすい僕はそのままホイホイと付いて行って、「ちょっと変わったおもしろい子」みたいなポジションで一年と少しを過ごした。思い返してみれば、同期の友だちの家にみんなで泊まって朝までだらだらと話したり、結構親しくはしていたというのにあのフェードアウトは薄情だったかもしれない。


文化が違うと言ってもけして言葉の通じない理解不可能な人たちでもなくて、極めて、本当に極めて普通の大学生たちだった。テスト当日に「ゼンゼン勉強してな〜い」とか言いながらそこそこの点数を取ってきたタイプの人たちだ。リア充という言葉を使うリア充たちだ(この言葉は好きではないので普段は使わないけど)。みんなアニメだって見るし漫画だって読む、だけどなにかが僕とは違っていた。伝わるかな?きっと伝わるよね。
なにが違ったのかは、「オタク」だとか「孤独」というキーワードに頼れば言葉に出来るような気もするけど、無理に言葉にしてしまうのももったいないのでしばらくこのままにしておこうと思う。


というわけで予定外に長くなってしまった大学時代前半の思い出語りおしまい。
大学入学当時は先輩だった人たちと同じかそれ以上の歳になってしまったことには少し複雑な思いもある。
時間が経つことほどおもしろいことって他にはないね、本当に。