恥ずかしい話

どこで聞いたのだかすっかり忘れてしまったけど、書店や図書館には妖精が棲んでいて、僕らがなにかに惹かれるように一冊の本を手に取るのは妖精がそそのかしているからなのだ、という話がある。
妖精は気まぐれでいたずら好きだから、それが運命の一冊になることもあるけど、とんでもなく退屈な一冊かもしれない、と。


本が好きな人間というのはとかく本にまつわるものを詩的に表現したがる節があるように思う。
僕もこの妖精の話はあまりにロマンチックすぎてどうだろうかとも思うのだけど、とにかくキャッチーであるとは思う。
例えばブログの書き出しなんかにはちょうどいい。


似たようなもので、正岡子規「真砂なす数なき星の其中に吾に向ひて光る星あり」という句がまるで本との出会いのようだという話を天声人語で最近読んだ。
これまたロマンチックというか気障だけど、悔しいことに少し感動してしまった。


読書を続けているとある日突然、蓄えた言葉が頭の中で発火して、点と点が繋がる瞬間が来る。
もちろん点は勝手に繋がるわけではなくて線を引くのは自分自身なのだけれど、まるですべてがあらかじめ準備されていたかのようにさえ感じるその瞬間をロマンチックに語りたくなる気持ちはよくわかる。



こんな風に独りよがりな読書礼讃をすることには少し気後れもあるのだけど、とあるちょっとした第一歩、のつもり。