気持ちのいいこと

絵画や写真や映像などを観るときに、その裏にあるなにかしらの主張や思想のようなものを求めてしまうという癖があった。
子どもの餓死を待つハゲタカのあの写真のように、はっきりとしたメッセージが込められているのではないかと、と。
言ってしまえば、それは浅い見方というか、ほんの一面しか見ていなかったように思う。


ところが、tumblrで見かけるGIFアニメには繰り返し眺めているだけで、意味など無くともただひたすらに気持ちがよくなるものがたくさんあった。
日常の些細な場面を巧みに捉えてアニメーションにするだけでおもしろく、気持ちがいい。
そもそも、メッセージがどうだとか、簡単に言語化できてしまうのであればはじめから言葉で表現すればよいのだから、言葉にできない気持ちよさそれ自体にこそ価値があるのかもしれない。
考えてみれば、音楽に対しては純粋に気持ちのいい音やかっこいい音であればよいと思っていたのだから、それが視覚や言語にも広がっただけなのかもしれない。
こうなると、写真などを前にしてしきりに考え込んでいた昔の自分がなんだかとても馬鹿らしく思えてくる。
そんなわけで、近頃は展示会や映画館に足を運ぶのが楽しくて仕方ない。


ところで、tumblrのリブログへの衝動は、所有欲とも共有欲とも違うもっと単純なもので、「なにかアクションをしたい」というより純粋で漠然とした欲求である気がする。
本を買ったときに、その本を読みたいだとか、本棚に並べて眺めたいだとかではない、もっと単純な欲求が満たされるのと似ているかもしれない。
消費の欲求というのが一番近いのかもしれないが、対価を支払うことに満たされているわけでもないので、なにかもう少し適した言い方があるようにも思う。